『田園の詩』NO.105 「どぶろく祭」 (1999.11.2)


 国東半島の秋祭の代表格といえば、大田村・白鬚(しらひげ)田原神社の≪どぶろく祭≫
です。大田村は我が町の隣にあり人口は約2千人ですが、10月17〜18日の祭当日は、
その10倍以上の人出で大変な賑わいをみせます。

 この祭の案内文には「天下御免の」という言葉が必ず添えられています。それは、≪どぶ
ろく≫(お酒)を氏子が造ることが国から特別に認められているという意味です。現在は、
お酒は民間人が勝手に造ることはできませんが、昔からの伝統を受け継ぐ神事としての
酒造りなので許可されているのです。

 ≪どぶろく≫は祭の3週間前に氏子達の持ち寄った新米20俵(1200s)を使って仕
込み、一升ビンで一千本以上造るそうです。この白濁の素朴なお酒≪どぶろく≫が、祭の
2日間に参拝者全員に振る舞われます。

 もともと、酒好きの多い土地柄、ましてお神酒が何杯も飲めるとあって、毎年、参拝する
熱心な愛好者も沢山いるようです。


      
     お酒の味は、醸造時の気温などによって毎年微妙に違うようです。お代わりは
      2杯位までで…。 運転者には小さな容器に入れて渡されるようになっています。
      家に帰ってから、ごゆっくり…・と。     (08.10.18写)



 私も≪どぶろく≫の薫りに誘われて、18日に参拝してきました。境内は赤い顔をした
人々の歓声で満ち溢れていました。

 「村の中なら車を運転しても大丈夫。見逃してくれる。」 こんなすごい冗談をいって
いる人がいました。しかし、これには「オチ(落)」があります。「村から一歩でも出ると
捕まるゾ」。(祭といえども、飲酒運転は認められておりません。念のために。)

 さて、祭で何か振る舞われる物がある場合、それを戴くと一年間カゼを引かないとか、
ガンにかからないとかのご利益を宣伝することがよくあります。ここ白鬚田原神社では、
そんなご利益を強調しません。―五穀豊穣の恵みに感謝する―、これが祭の第一義に
据えられています。

 秋の実りの新米でお酒を造り、神前に供えた後、そのお神酒を皆で戴く。≪どぶろく祭≫
に農耕民族の祭の原点を見る思いがします。

 小賢しいご利益を祈る祭りより、天地からの恵みを素直に喜び感謝する祭りの方が、
清々しくて、私は好きです。                   (住職・筆工)

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